ステキな人たち

第2次世界大戦。北アフリカ戦線では連合軍のアメリカ軍が参戦してきて枢軸国側のイタリア軍は苦しくなってきていた。

イタリア軍のある部隊が一戦終わって野営。見張りの兵士が監視を怠らないときに、その部隊から離れてある兵站のテントあたりに怪しい人影を発見。どうやら軍服から察するにアメリカ兵。はぐれてしまったらしくたった一人で、軍服もボロボロ。武器も持っていない。おもしろがってイタリア兵たちがかわるがわる見張っているとも知らずに、テント内を物色している。ついに自分のボロ服を脱ぎ、イタリア軍の制服に着替えてその陣地へと向かってきた。陣地では夕食の支度をする時間帯。見張りをしていた一人が駆け戻ってきて隊長に、
「マヌケなアメリカ兵がイタリア兵に化けてこちらにやってきます!」
と報告すると、
「ならば、もう一人分パスタを用意しなきゃな。頼んだぞ」
と隊長は炊事当番に声を掛けた。そして、隊長はなけなしのワインを自分のテントから持ち出してきた。

何も知らないアメリカ兵はその陣地へ来てかなり流暢なイタリア語で、
「すみません。部隊からはぐれてしまって……」
と言い訳をはじめた。彼のイタリア語はかなり上手で、訛りはあるものの地方出身といえば通じるレベルだったらしい。隊長は……
「そりゃ大変だったな。飯でも食っていけ。ワインもあるぞ……」
と応じたが、皆は彼がアメリカ兵なのを知っているので、笑いをこらえるのに必死だった。
イタリア兵に変装した若いアメリカ兵はすごい勢いでパスタをたらふく食べ、ワインも飲み干した。……と、我に返ったように
「西はどちらかなぁ。原隊にもどらなきゃ……」と急に落ち着かなくなった。
すると、隊長はニヤリと笑って……
「戻る前に、今年の野球はどこのチームが優勢なのか教えてくれ」と言った。アメリカ兵は途端に真っ青になってへたり込んでしまった。
ただ隊長としては、捕虜を抱えても面倒臭いだけで、そんなどうでもいい手続きは省きたかった。丁度よい具合に撤退命令が届き、翌日はそこから退くことになる。その若いアメリカ兵に水と食料そしてコンパス(方位磁石)まで渡して、逃がしてやった。その若者は若者で消え去る最後まで何度も何度もワインとパスタのお礼を言っていたという。

まあ、イタリア人は戦争には強くないのだろうな。でも、女好きというだけではなく、ステキな人たちだよね。

※「2ちゃんねるまとめサイト」にあったものからピックアップしてさらにまとめました。