2015-01-01から1年間の記事一覧

転校生

中学3年生のとき、何人かの転校生がやってきた。そのなかの一人は色が抜けるように白く、目がブルーの女子生徒であった。多分、どこかの代で「白系ロシア人」の血が混じったのだと思う。その上、頭もとても良かった。 彼女は一瞬で男の子たちを虜にした。私…

真狩村

もう6〜7年も前の6月。千歳空港に降り立ったときには雨。小糠の雨。翌日までなんのプランもない。 とにかくレンタカーを借りる。南に下って苫小牧。その太平洋岸に沿って西に。雨が止めば、次はミルクを溶かしたようなガス。“今日は適当なところへ逃げ隠…

『永続敗戦論』感想

この本はまず……《「私らは侮辱のなかに生きている」2012年東京代々木公園で行われた「さよなら原発10万人集会」において大江健三郎は、中野重治の言葉を引いてそう語った。この言葉が3.11以来われわれが置かれている状況を見事なまでに言い当てている。》 で…

『日本語が亡びるとき』感想

『日本語が亡びるとき』を読み通すのに随分時間を掛けてしまった。中味で450ページ。結構な厚さだ。 厚さのみではない。ここへ、さらに著者独特の“コンセプトワード”が加わってくる。それを説明するとこの本のおおよそが察せられる。……「ホモ・サピーエン…

国会正門前

●7月15日。夕方から外せない先約があったので、まだ暑いさなか国会議事堂まで急遽出掛けた。 ……というのも、この朝「安保特別委員会」の審議がヤマ場に差し掛かるというのに、NHKの国会中継はなぜかやっていなかった。そのセイだと思うが、インターネット…

私のAmazing Grace〜神の恩寵

今では「グリーン大通り」って名前になっているようだ。JR池袋駅の東口から地下鉄東池袋駅方面へと真っすぐに伸びた大きな通り。 大学3年の春だったと思う。北海道への帰省に際しての旅行用バッグを求めに池袋へ出た。 要町のバス停を出るときには小雨模様…

財布羽田事件

朝7:30発新千歳に搭乗するべく、空港リムジンバスで最寄り駅から羽田第一ターミナルに着いたのが6時35分くらい。 まだ余裕はある。トイレに行って、コンビニでおにぎり買うくらいの時間はある。 あら?「東京ばなな」! 友人にひとつ……とお尻のポケットに手を…

スチュアーデスそして機内食

昔はスチュワーデス、男はスチュワードとかパーサーとか言っていたのに、いつのころからか「キャビン・アテンダント」という気持ちの悪い和製英語になった。「ポリティカル・コレクトネス」とかで、差別や偏見が含まれてない言葉を使おうねって———この場合は…

カタバミ  

ソメイヨシノの咲き始めた頃。 駅へ続くコンクリートの歩道の上に5㎜ほどの黄色い花が頼りなげに咲いていた。カタバミの花だ。「片喰」と書いたりもする。 柔らかな土のベッドもなく、氷のナイフのような寒風、アスファルトも溶ける炎暑……そして気まぐれな時…

量子力学そして認識論

「量子」とは原子以下の極微小サイズの電子、光子、中性子、素粒子などをひっくるめていうらしいのだが、原子以上のサイズのものの振舞いと、この「量子」の振舞いはとことん違うということらしいのだ。それまでのニュートン物理学などの古典の常識をことご…

【ショートショートエッセイ】三題噺

①「女性バイカー」萩原流行がハ−レー・ダビットソンで転倒して死んだ。そのことをきっかけに女性バイカーとチャットした。 ……………(me) バイク乗りが一目置かれたり、尊敬に近い感覚を持たれるのは、身を守るのは自分の身体と運動神経や反射神経しかないから…

生命(いのち)の蜘蛛の巣

日本中の人々を鬱に突き落とした川崎の中三男子の惨殺事件も、そのほとぼりは随分と冷めてきた。 これほど凄惨な結末のイジメの事件も珍しいが、今までもイジメを受けていた児童が自殺したことが明らかになったなどのときにも、“いじめ ダメ ぜったい”みたい…

名前

かつて大宅壮一という評論家がいた。彼は昔から言う「名は体を表わす」ということは本当のことだ、と言っていた。 理由は、親は子供の名前をつけるときに死ぬほど考える。そして、つまりは自分の“想い”とか“願い”を名前にして子供に托す。そんな想いや願いの…

ニューヨークで道を訊かれる

多分二度目のNYだったと思う。「タイムズ・スクエア」近くを歩いていたら、小脇に小包らしきものを抱えた白人の青年から突然道を訊ねられた。そう、意表を衝かれた。 “へ、オレに道を訊くのかよ” って思いながら、 「悪い。オレ旅行者だから解らないんだよ」…

リベンジ

“在日韓国人”ジュニアと呼ぶのだろうか……。とにかく、父親が日本に帰化したその息子が学生にいた。……というか、彼が以下の話をしてくれたから、そうだったのかと判ったということなんだが。 息子の彼から聞いた父親の話。例に漏れず、彼(父親)は“在日”とい…

プッタネスカ(娼婦風)

学生時代、ルームシェアしていた男が痔の手術をしてヒーヒー言って寝ているので、「よしメシ作ってやる」といってちらし寿司を作ってやったことがある。門前の小僧等というヤツね。母親のやるのを見ていて自然に覚えてしまっていたんだね。その友人は会えば…

気圧される

最寄り駅から準急新宿行き小田急線。8時30分頃なのでやや混んでいるが、ラッシュではない。乗り換え駅での人の流れに身を任せていると、反対側のドアの手すりを背に立つ塩梅になった。出口を目指して逆デルタ状に並んでいる10人ばかりと対面する感じになった…

言葉は何を紡げるのか?

池袋東口にほど近いビルの3階だか4階の喫茶店。久し振りの友人と会うので、静かにゆっくり話をしたい。なにかとザワついているコーヒー・チェインを避けたつもりなのに、入った時に“あっ、しまった”と思ったが、“まあいいや”といい加減さと一緒に腰を下ろ…

『空海の風景』

相当前のこと。 満員の通勤電車のなかで前の男が本を読んでいた。車内吊りを読む位置にもいない。仕方なしに彼の本を彼と一緒に読んでしまっていた。「思想家としての空海は天才とかなんとかいうより、空海が宇宙そのものであった……。」(司馬遼太郎『微光の…

限界集落と移民

去る2013年2月23日における野田聖子議員が佐賀県武雄市の講演を終えた後の記者団との問答だということだから、相当に旧聞には属している。 「年間20万人が妊娠中絶しているとされるが、少子化対策をやるのであればそこからやっていかないと。参院選後に党…

宗教的なるもの(「葬式無用戒名不要」)

それまでは「年籠もり」などのようなものだったのが、新暦の正月に神社に行くという「初詣」は、明治以降にできた日本の風習であり、それに便乗して、その頃発展しはじめた鉄道会社が閑散期に利用客を増やすための「マーケティング戦略」であったという話に…