【ショートショートエッセイ】三題噺
①「女性バイカー」
萩原流行がハ−レー・ダビットソンで転倒して死んだ。そのことをきっかけに女性バイカーとチャットした。
……………
(me)
バイク乗りが一目置かれたり、尊敬に近い感覚を持たれるのは、身を守るのは自分の身体と運動神経や反射神経しかないからじゃないのかな?つまり、いつも死の波打ち際を歩いているってことじゃない? 死と怪我を両脇に抱えて疾走しているというか……。
だから、多くの親は我が子がバイクに乗ることを反対する。 ボクの息子がバイクに乗りたいと言ったとき、妻は大急ぎで四輪を与えた。彼はその四輪で走り屋をやっていたが……。
(she)
確かにスピード出せるところまで出すと、ちょっと間違ったら死ぬな……と思うこともあります。でも普段安全走行していれば何も問題ない。「バイク=事故率高い」って言うのは、危険運転をしているライダーの話で、そうでなければチャリも車もバイクも安全だし、同時に危険です。
(me)
「イコール事故率高い」にボクは単純に加担してない。だが、「人間は間違う。必ず間違う」。間違ったときのダメージが比較にならないほど酷い。その事を言っているのだが、そこがバイクの魅力の根源のような気もしている。危険と魅力はいつも背中合せだ。危険な女が魅力的あるように……。
(she)
なるほど。じゃあ乗りますか?
(me)
死ぬにや早過ぎるが、バイクを乗るには年取り過ぎた。
(she)
爆笑……
(me)
涙流して笑うほどではない。アメリカでは見たなぁ、イージーライダーのようなバイクに乗った老ライダーがいたよ。
もう取り返せない青春……そのなけなしの青春と一緒にツーリングしていた。
……………
「バイク乗りだけがなぜ犬が車の窓から顔を出すか知っている」
すごく感じは分るんだけどなァ……。
(完)
②「私の可愛い孫です。」
夏の頃だったと思う。小田急線の電車のなかで、アメリカ人のおばあちゃんと孫が乗っていた。その男の子は金髪が日の光にきらきら輝いていて、もし天使がいるとすれば、こうだろうなと思わせた。その子が着ているTシャツの胸には日本語で、
「私の可愛い可愛い孫です」
って書いてあった。
思わずそのおばあちゃんの顔を見ると、
“ね、ホントに可愛いでしょう?”
って微笑みかけてくる。
“こりゃもうダミだ。始末に負えねェ”。
車内の人々はみんながみんな幸せそうに微笑んでいた。
(完)
③「VAAM」
人がパン屋の店先で希望のものを探しながらトングをカチカチ鳴らしているように、スズメバチもカチカチと威嚇して、時には人間までも襲う。彼らこそは昆虫界の食物連鎖の頂点に君臨している。
スズメバチは捕らえた獲物を切り刻み肉団子にして巣に持ち帰るが、自分は食べずに全て幼虫に与えてしまう。そのご褒美に幼虫は口から液を吐き出す。成虫はその栄養価の高い液を口にする。これだけが成虫のスズメバチの代謝物。これが一日に100kmも飛ぶスズメバチ(人間に換算すると東京ー名古屋を往復くらいになる)のエネルギーとスタミナの源になっている。
人間の幼子はただひたすらに愛らしさを親に提供しているだけなのだが……。
スズメバチの最大の武器の毒針が上下左右に自由にかつ俊敏に動かせるために、胴回りを極端に細くしてある。だから、固形物は通過出来ない。液体だけしか通過出来ないのだという。
それにしてもなんとも不思議な「相互依存」のカタチだ。
で、この液体ってなんだ?って散々研究した奇特な人がいて、ついには17種のアミノ酸で構成されていることを突き止めた。それを製品化したのが「VAAM(ヴァーム)」。
これが私の目下の愛用ドリンクになっている。
私の疲労回復にはよく効くが、心なしか、最近腰がくびれてきた。
(完)