ショート・エッセイ3「カツオ」

■1960年のオリンピックのローマ大会の水泳400メートルリレーで富田一雄という選手がいた。
彼が泳ぐと「カツオ!カツオ!カツオ!」と観客からの大声援・大合唱が凄いということだった。
実を言えば、イタリア語でcazzo(カッツオ)って“おちんちん”のことを指す。だから、「おちんちん、おちんちん。ガンバレー!!」などと大声援で盛り上がり、その合間にクスクス笑いとか大爆笑も伴っているわけだ。
富田選手も当初は自分の人気に気をよくしていたが、後にイタリア語での意味を知り悄然。

■日本人の女性がイタリアの家庭にホームステイ 。その日の夕食は彼女が日本料理をふるまう番。キッチンで下ごしらいをしていると、中学生の次男坊が見学に。彼女はワザと鰹のけずりだしの粉末を取り出して、「これが凄いのよ」って煽った。
彼の「それなーに?」に応えて、彼女は「カツオの粉末よ」と。次男坊は目が点になり立ちすくむ。 まあそのままにするではなく、きちんと説明をしたのだが……。でも、それからが大変。
今度は次男坊が居間にいる家族を一人づつキツチンに連れてきて 、「これなんだと思う?」「カツオだよ!カツオの粉末!」……家中で「カツオ、カツオ(おちんちん、おちんちん)」が飛び交って笑い転げている……。

■イタリアでも日本のアニメは大人気だが、『サザエさん』だけは難しいらしい。問題は「磯野カツオ」らしい。これはイタリア語では「私はおちんちん」になるらしい。(……全然間違っていないのだが。)
でも、上二つの話がウケているのなら全然オッケーじゃないの?

(完)