海賊

「先祖を溯ると海賊だったんだよね」
などと、結構なドヤ顔でおっしゃる人にときどき会う。
だが不思議な事に……
「オレの先祖は山賊でさァ……」
とのたまうご仁には一度も会った事ない。



海賊の子孫達が手繰り寄せる先は松浦水軍、村上水軍熊野水軍、九鬼水軍などである。表看板の「水軍」っていうと立派な水上兵力な感じがするが、裏稼業は略奪・強奪の「海賊」である。
頼朝、信長とか秀吉が陸の氏族とすれば、海の氏族が別個に存在していた時代があった。
この海賊のなかには遥か朝鮮とか中国まで出張って、その沿岸部を荒らしたのが「倭冦」と呼ばれている。

(⇦信長軍に加勢した九鬼水軍の鉄甲船石山本願寺に加勢した村上水軍を撃破)









「海賊」というのはなにやらロマンが介在するのだろうか?
「山賊」ってなると、つまり「盗賊」になっちゃうし、代表格は釜茹でになった石川五右衛門である。大きなタワシのような口髭と山嵐のようなヘア・スタイル……まったくおしゃれじゃないしロマンの欠片もない。

ハリウッド映画では、ジョニー・デップの『パイレーツ・オブ・カリビアン』があるよね。やはり、香ばしいんだね、海賊って。

いや待て、ハリウッドが好きな「ロビン・フッド」って山賊じゃないの?
それにさ、ソマリアの海賊にロマンはないよね。彼らの貧困が略奪に駆り立てているだけだし……。






イギリスのエリザベス朝時代のフランシス・ドレイクは海賊からのし上がり、提督にまでなり、スペイン無敵艦隊を撃破してサーの称号まで貰った。
イギリスの軍港プリマスの丘にはドレイクの立像が立っている。いまだに彼方のスペインに向かって睨みと凄味を効かせていた。

ステーブ・ジョブスが……
「海賊になれるのに、なぜ海軍に入るんだ?」
と言っているが、ひょっとしてこの言葉はこのサー・フランシス・ドレイクをどこかで下敷きにしているのかも知れない。

(完)