郵便切手の糊だけでつながっている

20代で年賀状を出すのが、おおよそ半分だという。これでは、「日本郵便」も大変だ。これほど電子メールが当たり前になり、twitter,facebook,lineなどのSNSが普通になれば、紙の年賀状はかったるい。(鉄道が敷かれて、馬子が失職するようなものだ。)
だが、私が昔から年賀状のヤリトリをしている人々はアナログで、PCとスマホ経由ではまったく埒が明かない。

いっときは300枚以上を手書きしていた。今考えるだけで、寒気がする。まことに、「年賀状ソフト」というのはありがたい。
それなのに、毎年投函が大晦日に近くなる。生来の計画性のなさだ。最近は少し進歩して、27日とか28日になる。
枚数を三分の一程度に割愛したことが、日数を短縮させた事に繋がってはいる。

ジョン・スタインベックの『エデンの東』の中で、中国人の執事が

「郵便切手の糊だけでつながっているという間柄くらい惨めなものはございません」

と、ほとほと呟いている。
そうなんだ……、年賀状でしか挨拶を交わさない……とっくに酒精分が飛んでしまっている浮世の義理を古い慣習に委ねちゃったままにしている。

そんなかつての友人の配偶者とか息子さんから、

「夫は……父は……○月○日に永眠致しました。……」

という喪中の知らせが11月末あたりに届くようになった。それも一人じゃない。

“一度くらい会っておけばよかったかな……”

一望の荒れ野で木枯らしに吹かれて愁然と立ち尽くす。

(完)