女の涙

人生長くやっているので、女に泣かれたことはある。
そのうち何度かは会社でだ。
仕事の不始末やミスを何度か繰り返すので、ほんのちょっときつく注意したら泣いた女がいた。
心では

(キッタネーな!お前。それって禁じ手じゃねーのか?)

って思ったが、相手が女の子だけに

(あいつら怪しいんじゃね?痴話喧嘩?)

なんてゴシップしたいヤツが沢山いる。こっちも、多少は動揺したり焦る。
男は男なりの「涙の定義」って持っているので、その“物差し”で測ろうとする。
で、「何だこの涙は?この意味は?」ってドギマギする。どの範疇にも入らない涙だもの・・・。
女は女の涙に男が立ち往生するのを本能的に知っている。
だからこそ、確実に武器に組み込んでいる。

もちろん、いまでは死語になっている「男女雇用均等法」以後の話だよ。
その2、3日後、次のように諭した。

「男と同じ価値観で働くために来たんだよね。仮に仕事上の注意を受け男が泣けば、
そいつはそれで終わりだよ。男と同じ権利を主張するということは同時に、
男の義務とか振る舞い―歯を食いしばって泣かないーもリクエストされるということだよ。
権利も欲しい、女の甘えも欲しい……のいいとこ取りは勘弁しろよ」

ある女子大生がipodが壊れて量販店に行き修理を頼んだが、
保証期間が過ぎているのでダメって言われた。で、彼女は突然大泣きをしたらしい。
先方は大いに慌てふためいて、真っ更な新品のipodと替えてくれたという。
「効果あるのよね」とうそぶいていた。

男にとって、この得体の知れない女の武器に対抗する防御はたった一つしかない。
「ダンマリ」だ。
だが、ボクはこのダンマリが苦手なので、悲劇だ。

「女の涙はリクリエーションの一つである」ってある人が言っていた。
涙が彼女たちの“気晴らし”で終始するなら、それは“趣味”だから何も言わない。
時には、ミサイルに使うので始末に悪い。

男はメシ食ってセックスして、「喜怒哀楽」という感情の綾のなかで生きている。
女もほぼ同じに見えて、「喜怒哀楽」に「涙」という強力な補助線が引かれている。
むしろ、「喜怒哀楽+涙」と言ってしまった方がいいのかもしれない。
しかし、大概の男が理解できるのは「喜怒哀楽」まで…なんだよな。

男は精子が溜まるとそれを排出したくなる。
同様に、女は涙が溜まるとそれを排出したくなるらしい。

「女は泣きたがっている」
という洞察を得てからは女の涙にはたじろがなくなった。

(完)

facebookの「ノート」からの転載。