愛しき動物たち⑥「ムース」

カナダの夏のバンフ。氷河が何万年の時間を掛けて山を削り川のように流れた後にゴルフ場がデザインされている。
(バンフスプリングスホテルゴルフ場)

朝7時半のスタートは厳冬の寒さである。何ホールか進んで振り返ると、うっ!と声が出るほどの風景だ。氷河が動いてきた道筋は平らになっているのだが…つまりそこがゴルフ場……、それ以外のところは岩山が削られて屏風のようになって峨峨と聳えたっている。奇観といっていい風景なのだ。

そろそろ最終ホールに近づいてきたころ、遠くのフェアウエイに草を食む動物たちの一群がいる。カートで近づくとその影はハンパじゃない大きさだ。ここらでは「ムース」といい、ヨーロッパでは「エルク」と呼ばれる「ヘラジカ」だ。さらに近づくとその体高は2メートル前後だからサラブレットの大きさといいとこ勝負。おっかなびっくり「ホー!ホー!」とか言ってフェアウエイを空けて貰って、われわれはコソコソと通過した。

以前、イギリスのプリマスでのゴルフのときには、フェアウエイには牛が放牧され、グリーン上ではアヒルがなにやら虫でも啄んでいることに驚かされた。ゴルフ場のメンテナンスの一環なのだと説明を受けた。
このムース達がメンテの一翼を担っているのか、それとも勝手に入り込んでいるのかを尋ねるのは忘れてしまった。

(完)