ネオテニー(幼態成熟)

前回の「北帰」の復習のようになるが……。<氷期+干ばつ>のアフリカを出た現世人類は海沿いを歩いて南インドに至りここでしばらく居住した。(しばらくといっても万年単位)
そのあと、四方八方に展開していくことになるのだが……。南アジアへ行ったものが「南モンゴロイド(古モンゴロイド)」になっていく人たちである。(多分、縄文人はこれ……)
そしてインドを北に向かい北部中央アジアへと移動して行ったのが「北モンゴロイド(新モンゴロイド)」と呼ばれる。
この一帯は「マンモス・ステップ」と呼ばれて、マンモスの一大生息地であった。現在より植物相が遥かに豊かであったらしい。彼らは生涯マンモスに付きまといその肉を食い、マンモスの骨で作った家に住み、その毛皮をまとい……と、なにからなにまで巨象に依存して生きてきた。それがマンモスの絶滅とともに、中国に南下してきた。その一部が「弥生人」として日本に来ている。

(結構荒っぽく書いている……詳しくは末尾の『人類の足跡〜10万年全史』を参照してください。とてもすばらしい本だと思います。)

北モンゴリアンを特徴付ける細い骨、著しい顔の平板化、頭蓋の前後の長さの縮小(つまり円形)などなどがいかに出来たかについては、寒さに対する身体対応説と単純な孤立による遺伝的浮動説などがある。
「目が細いのは雪原のまぶしさから保護するためになった」などという理由を聞かされると眉に唾を塗りたくりたくなる。寒い北欧の白色人種はどうなるんだい?って。

さらに「北モンゴロイド」を特徴づけるのは「幼態成熟(幼体成熟)」
つまり「ネオテニー」」である。そもそもがホモサピーエンスというのは霊長類のなかでの「ネオテニー」種であると言ってもいい。比較的大きな脳、脊椎上の前方に展開した頭蓋、体毛の消失というのはチンパンジーの胎児段階で見られるもの。胎児のみならず、幼児のチンパンジーもとても人間に近い。(成獣は顔も黒く“けもの”になる。)

この「ネオテニー」を「幼形保有」(ペドモルフィー)という学者もいるが、モンゴル、中国、韓国、日本あたりにはこの特徴を持つ者が多い。
このような「幼形保有」はかわいらしく見えて高く評価され、それが優位の遺伝子となるというのは十分に考えられるという。

遠洋漁業の乗組員たちが漁を終え、いざ帰港と航海していて、“いや〜、日本が近いぞヤッホー!”と思うのは、短波放送から切れ切れに聞こえてくる日本女性のキンキン声だという。声の「ネオテニー」。

個人的な経験で言えば……。サンフランシスコへロケ撮影に行き、撮影用としてどうしてもオープンカーの「トランザム」を借りなくてはならず、空港のレンタカー・カウンターでそれを申し込んだら、金髪のおねえさんが…
「25歳越えているの?」(その手の車なのでガキには貸せないのよ…)
そのときボクは38歳だった。それを告げると、酷く驚いて…
「どうして日本人って若く見えるの?じゃ〜、私は何歳に見える?」
「25くらい?」
「オーノー。19歳よ、まだ」

我々から見れば、やつらは総じて老け顔に見える。

ネオテニー」のもっとも解りやすい例は「ウーパルーパー」(日本でのマーケティング・ネーム)だろう。このなんとも愛らしい生き物が「ネオテニー」因子が支配しないで普通に育つと変態して「メキシコ・サラマンダー」という結構凶暴な顔つきのサンショウウオになる。





なぜヒトに「ネオテニー」が必要だったということはよく解っていないが、「倹約遺伝子」(最小のエネルギ—で生命を維持して行く機能の遺伝子。余剰のエネルギーを貯め込むことから肥満遺伝子ともいうが……)との関連で「ネオテニー」であることが効率的であるらしい。

進化に影響を及ぼす優位の遺伝子って民族によっていろいろだ。
紫外線が引き起こすさまざまなトラブルからは濃い肌色の人は避けられるので、それが優位な遺伝子になる。だから同じコーカソイド(白人種)でもイタリア人やスペイン人は浅黒い。つまり、そういうタイプだけが生き残って来たということだ。
面白い例。オーストラリアは“白豪”というくらいに白人種の国だが、強い紫外線により皮膚がんが世界一だ。従って、それを避ける意味で彼らも年々肌の色が濃くなっていく“進化”のプロセスに入っているという。
逆のケースでは、イギリスのインド人や黒人にとっては日射量が少なく、かれらにはくる病の発生率が高い。代を重ねるうちに白くなっていくのだろうか?

ネットスラングで「ロリババア」(外観が少女にもかかわらず喋りかたや精神面が年寄りであるような振る舞いをする女性)という言葉があるが、そのマトメで阿川佐和子が筆頭になっていた。

http://blog.livedoor.jp/aoba_f/archives/33543996.html

つまり、これはネオテニーだ。若手女優では宮崎あおいだろうな。あれで28歳だというぜ?!

日本の敗戦後、マッカーサー連合国軍最高司令官が日本に上陸し、「日本人は12歳の少年だ」と言って日本人の心を逆立てた。だが、これには前段があり、

「ドイツは成人の悪党だったが日本は12歳の少年のようにウブだ」

くらいの意味合いだったらしい。ま、でも、我々の「幼形保有」が強く彼に影響したレトリックだなって思う。

もうひとつ北モンゴロイドが持っているのは「下戸遺伝子」だ。通常であれば、「アセトアルデヒド脱水素酵素」というものを所持しているはずなのだ。アルコールを摂取して体内で毒性の強い「アセトアルデヒド」になっても、それをこの酵素がただの酢酸にしてしまう。「下戸遺伝子」とはその欠損型を指す。このタイプは白人種、黒人種にはなく、南モンゴロイドも問題なし,ひとり北モンゴロイドの40%前後がアルコールに弱いか全くダメだ。
人類が発祥するまえから、果物が腐敗(発酵)して自然界のいろんなところに酒はあった。もちろん、人類も喜んでそれを飲む。
グループで群れをなし、規律を守り生活していたから、そのことが探究心、空想力や好奇心に蓋をしていた。これを打ち破ったのが酒である。これでタガを外してイノベーションを為したといっている学者がいる。
「酔っぱらいが文明を作った」
というのだが、北モンゴロイドの文明はどうだったのだ?
ボクもその「下戸」なんだよ……。

この「下戸遺伝子」が「ネオテニー」や「倹約遺伝子」とどう関係あるのかボクには皆目見当もつかない。
解っていることは、地球上でもっとも繁栄しているホモサピーエンスの種族がわれわれ黄色人種であるということである。

本論の「ネオテニー」に戻そう。
とにかく「かわいい」ということが優性な遺伝子である限り、日本人は代を重ねる毎に「かわいく」なっていく。(間違いない……)
同時に、ものごとの評価軸や審美眼の最上位にくるものは「かわいい」というクライテリアである。いまではこの「かわいい」(kawaii)が国際語になろうとしている。

そのことを指し「ネオテニー文化」だとか「ネテニー国家」だとかっていう人がいるけど、それはどうだろうか?そういう材料だけを拾い集めて組み立てて、“ためにする”論にしていないか?もっと腰を落として考察・熟考した方がいい。

ただ一つ、
「女は外見的なネオテニー、男は精神的なネオテニー
という説には大いに頷くところはある。

(完)

人類の足跡10万年全史

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