生命(いのち)の蜘蛛の巣

日本中の人々を鬱に突き落とした川崎の中三男子の惨殺事件も、そのほとぼりは随分と冷めてきた。 これほど凄惨な結末のイジメの事件も珍しいが、今までもイジメを受けていた児童が自殺したことが明らかになったなどのときにも、“いじめ ダメ ぜったい”みたい…

名前

かつて大宅壮一という評論家がいた。彼は昔から言う「名は体を表わす」ということは本当のことだ、と言っていた。 理由は、親は子供の名前をつけるときに死ぬほど考える。そして、つまりは自分の“想い”とか“願い”を名前にして子供に托す。そんな想いや願いの…

ニューヨークで道を訊かれる

多分二度目のNYだったと思う。「タイムズ・スクエア」近くを歩いていたら、小脇に小包らしきものを抱えた白人の青年から突然道を訊ねられた。そう、意表を衝かれた。 “へ、オレに道を訊くのかよ” って思いながら、 「悪い。オレ旅行者だから解らないんだよ」…

リベンジ

“在日韓国人”ジュニアと呼ぶのだろうか……。とにかく、父親が日本に帰化したその息子が学生にいた。……というか、彼が以下の話をしてくれたから、そうだったのかと判ったということなんだが。 息子の彼から聞いた父親の話。例に漏れず、彼(父親)は“在日”とい…

プッタネスカ(娼婦風)

学生時代、ルームシェアしていた男が痔の手術をしてヒーヒー言って寝ているので、「よしメシ作ってやる」といってちらし寿司を作ってやったことがある。門前の小僧等というヤツね。母親のやるのを見ていて自然に覚えてしまっていたんだね。その友人は会えば…

気圧される

最寄り駅から準急新宿行き小田急線。8時30分頃なのでやや混んでいるが、ラッシュではない。乗り換え駅での人の流れに身を任せていると、反対側のドアの手すりを背に立つ塩梅になった。出口を目指して逆デルタ状に並んでいる10人ばかりと対面する感じになった…

言葉は何を紡げるのか?

池袋東口にほど近いビルの3階だか4階の喫茶店。久し振りの友人と会うので、静かにゆっくり話をしたい。なにかとザワついているコーヒー・チェインを避けたつもりなのに、入った時に“あっ、しまった”と思ったが、“まあいいや”といい加減さと一緒に腰を下ろ…

『空海の風景』

相当前のこと。 満員の通勤電車のなかで前の男が本を読んでいた。車内吊りを読む位置にもいない。仕方なしに彼の本を彼と一緒に読んでしまっていた。「思想家としての空海は天才とかなんとかいうより、空海が宇宙そのものであった……。」(司馬遼太郎『微光の…

限界集落と移民

去る2013年2月23日における野田聖子議員が佐賀県武雄市の講演を終えた後の記者団との問答だということだから、相当に旧聞には属している。 「年間20万人が妊娠中絶しているとされるが、少子化対策をやるのであればそこからやっていかないと。参院選後に党…

宗教的なるもの(「葬式無用戒名不要」)

それまでは「年籠もり」などのようなものだったのが、新暦の正月に神社に行くという「初詣」は、明治以降にできた日本の風習であり、それに便乗して、その頃発展しはじめた鉄道会社が閑散期に利用客を増やすための「マーケティング戦略」であったという話に…

大晦日の映画館

大学三年のときだった。郷里への汽車の切符が取れないとか、その他にもなにやかやとすべてのタイミングがずれて帰郷を止めた。不貞腐れ半分に……。 その大晦日。新年の雑煮は遠縁の家で相伴させて貰うことにしたが、それまでたっぷり時間はある。そして……ふら…

郵便切手の糊だけでつながっている

20代で年賀状を出すのが、おおよそ半分だという。これでは、「日本郵便」も大変だ。これほど電子メールが当たり前になり、twitter,facebook,lineなどのSNSが普通になれば、紙の年賀状はかったるい。(鉄道が敷かれて、馬子が失職するようなものだ。) だが…

海賊

「先祖を溯ると海賊だったんだよね」 などと、結構なドヤ顔でおっしゃる人にときどき会う。 だが不思議な事に…… 「オレの先祖は山賊でさァ……」 とのたまうご仁には一度も会った事ない。 海賊の子孫達が手繰り寄せる先は松浦水軍、村上水軍、熊野水軍、九鬼水…

クリスマスにはチキン(臆病風)を……

「なんで日本人はクリスマスになると夢中でローストチキンを食べるの?」というアメリカ人が多い。 いや、ボクも何だろうと永年思ってきた。「日本ではターキー(七面鳥)が手に入りにくいから、その代替でチキンにしてんじゃね?」“ああなるほど!”と思いか…

下戸遺伝子

いまではすっかり人口に膾炙してしまっているが、アルコールを摂取すると体内でアセトアルデヒドというものになる。これが毒性を持つ。しかしよくしたもので、「アルコール脱水素酵素」というものが、この毒をただの酢酸にしてしまう。しかし、不幸なことに…

「サラダボウル③」

首都ワシントンDCの中の、それこそホワイト・ハウスから数ブロック離れたところにあったのがボクの行っていた大学であった。……「ベトナム戦争が」どう言い訳しても “敗北”に終わり、その憂鬱と屈折が社会のいろんなところにべったりと張り付いているような………

サラダ・ボウル②

首都ワシントンDCの中の、それこそ「ホワイト・ハウス」から数ブロック離れたところにあったのがボクの行っていた大学であった。「ベトナム戦争が」どう言い訳しても “敗北”に終わり、その憂鬱と屈折が社会のいろんなところにべったりと張り付いているような…

サラダ・ボウル①

首都ワシントンDCの中の、それこそホワイト・ハウスから数ブロック離れたところにあったのがボクの行っていた大学であった。 ラジオからは四六時中イーグルスの『ホテル・カルフォルニア』が流れていた。 https://www.youtube.com/watch?v=h0G1Ucw5HDg……「ベ…

打ち捨てられた志

まだ20代のころ。東京から真南に下ってグアム。そこからサイパンに向う。このマリアナ諸島は太平洋戦争の頃には日本の委任統治であった。眼下に展開する島々がかつての日本の領土だったのかという感慨はあったが、ただただひたすらに華やかに輝くエメラル…

怪鳥コンコルド

“怪鳥”と呼ばれた「コンコルド」でニューヨークからパリまで飛んだ事がある。1980年頃だったかな。 某広告主が是非乗りたいということで、同行した。ニューヨークのJFK空港のエールフランスの待合室でおしゃれなアペタイザーなどを食していると、フライ…

国境を越えるとき

ワシントンDCを真っすぐに北に上り、ニューヨーク州を縦断して、五大湖の一つオンタリオ湖から流れ出て大西洋に注ぐセント・ローレンス川を渡る。渡るとカナダ。真っすぐに行くと首都オタワに行く。そこから東へ折れモントリオールに向かい、ケベックを目指…

共感覚そしてアルチュール・ランボオ

レトリックのひとつに「共感覚法」というのがある。触覚、味覚、臭覚、視覚、聴覚の五感の間で表現をやりとりする方法だ。慣用句として「黄色い歓声」「深い味」「暖かい色」などを違和感なく使っている。コピーライターもこれが好物で「ラングドックのワイ…

色っぽい夢

生まれつきということではない。小学高学年の頃から夢に色がつくようになった。当初は明るい原色で、絵の具を溶かし込んだような真っ青な小川に真っ赤な魚が泳ぐ……といったような、まるでデズニー・アニメの世界のようであった。 高校のころ、人に切られた夢…

“ポエム化”そして“ポエマー”

“ポエム化”“ポエム化”というキーワードで日本の社会を鮮やかに袈裟懸けに斬り下げた小田嶋隆氏が『日本ポエム化現象の謎』という記事を「東洋経済オンライン」に連載したときの最初のページがこうであった。「日本中が“ポエム”であふれている。『夢』『勇気…

靄気(あいき)

外国のキャリアから久し振りに日本のエアラインに乗ったときに彼らフライト・アテンダントのサービスにちょっとした違和感がある。 え〜と……。湿気がたっぷり含んでじっとりした……何か……。打ち払っても払いのけてもまといついてくる東南アジアモンスーンの高…

オ・モ・テ・ナ・シ

オリンピック招致のプレゼンテーションで滝川クリステルがキーワードとして「オ・モ・テ・ナ・シ」と言って、なぜか最後に合掌した。西洋人顔のクリステルをなぜ出すのか?という詐欺でも働いているような居心地の悪さ。(日本人の顔をしてフランス語が流暢…

ノースリッジ地震

LAへ赴任して半年目くらいであった。1994年1月17日明け方。ベッドの下に大男が潜んでいて、ソイツが急に起き上がり突き上げて来たような感じで一瞬にして目が覚めた。 ……震源地に近いところに住んでいた男の話だと、寝ている体勢のママで1メートルほ…

SNSの液状化問題

毎日欠かさずブログを書いている男と話している。「ブログで200くらいいいね!つくと単純に嬉しいのよね」ってその彼はテレながらそう言った。 「それそれ。それをね、ボクは“液状化問題“って言っているんだよ。……ブログに限らずFBにもそういうのがいて、…

骨信仰

焼き場って言っていたものが火葬場になり、最近ではもっぱら斎場と言う。そこへ親類ならお付き合いすることになる。時間が来て火葬炉の前に立っていると、係員が台車に乗った焼きたての熱々を皆の前に引きずり出してくる。 (この係員も昔は「隠亡」<おんぼ…

20%ルール

余りにも有名になった「google20%ルール」。このルールというのは就業時間の20%を今の仕事と関連のないクリエイティビィティを感じられる仕事」へ使うということ。これは「使っていい」というのではなく「使わないといけない」というものである。「ム…